遺言書に係わる紛争を防止するために④
遺言書があっても、相続時に問題が生じる具体例の続きです。
③遺留分を侵害する遺言をした
まず、遺留分に反する遺言は可能でしょうか?
これは、可能です。
例えば、相続人に妻、子供がいる場合に妻に遺産全部を相続させる内容の遺言は、子供の遺留分を侵害しますが遺言全体が無効になるわけではありません。この場合、子供は、被相続人の妻に侵害された遺留分を減殺請求することができます。
次に、判例では、遺留分減殺請求権の行使により、贈与や遺贈は遺留分を侵害する限度で失効し、受贈者や受遺者が取得した権利はその限度で当然に遺留分減殺請求をした遺留分権利者に帰属することになるとされています。
妻だけに相続させるつもりだった遺産が、遺留分減殺請求された場合には子供との共有となってしまうこともあります。遺産の土地を、遺言者の妻は住み続けるつもりだったが、子供は売ってお金にしたいと考えていた場合などに問題が発生します。
このような場合、民法第1041条は受遺者や受贈者は減殺を受けるべき限度の価額を遺留分権利者に弁償することで、返還義務を免れる仕組みを設けています。
例の場合、遺言者の妻が、子供に遺留分減殺請求相当分を支払うことで、土地は妻のものとすることができます。