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田尻司法書士事務所の業務日誌」

「らいとすたっふブログ」とは一味違う司法書士の毎日をお伝えします。

遺言書の内容・文言 について(不明瞭な遺言だとどうなりますか?)

カテゴリ: 遺言 2013/07/23

遺言を書いた方がいいようだと思っても、実際どのように遺言書を作成したらいいのか分からないという方も多いと思います。

田尻事務所では、お客様の個々人のご事情をお伺いして、いわばオーダーメイドのように遺言書案を作成し、公正証書遺言を作成することをお勧めしてます。

これに対して、先日ご紹介した自筆証書遺言の文言に関連して生じる以下のような問題について考えてみましょう。

①「土地の半分を長男Aに相続させる」
この遺言書は長男A以外の相続人と長男Aで土地を共有しなさいという意味なのでしょうか、土地を分割して長男Aに相続させなさいという意味なのかわかりません。分割だとしたらどこに線を引くのか不明ですね。

②「家を次男に相続させる」

これだと、家屋は遺言相続の対象になりますが、家屋の底地が相続財産に含まれる場合は、土地は遺言相続の対象にならないため、別に遺産分割か法定相続の手続きを経る必要があります。

 

③「預貯金を妻と子供達に分け与える」
これは遺言の体をなしていません。誰にいくらずつ相続することになるのかまったく不明です。

 

自筆証書遺言は簡単に作成できますが、自分の思っている手続内容を実現する遺言書が完璧に作成できていると思わない方が賢明です。それは先日ご紹介したように、自筆証書遺言に関する裁判が数多く起されていることからも明らかです。

以前から繰り返しお伝えしていますが、遺言は遺言者が死亡することで効力が発生するものなので、効力発生後は書き直しがききません。(生前に遺言を書き直すことは何度でも可能です)

専門家に関与してもらって、きちんとした遺言書を作成しましょう。

遺言に係わる判例の紹介(自筆証書遺言について)

カテゴリ: 遺言 2013/06/09

自筆証書遺言について裁判所の判断が示された事例を中心にご紹介します。 遺言が効力を生じるのは、遺言を書いた人が死亡した時であるため、効力発生後の書き直しは絶対に不可能です。そのため、遺言について、下記のような問題について裁判所で争われました。

公正証書遺言なら下記のような形式的な問題が生じることはまずありません。

自書であるかが問題となった事例

①他人の補助

Aは、遺言書の作成を思いついたが病気のため、手が震え満足に字が書けない状態でした。そこで、筆をもつ手を、妻Bが後方から支え、添えてをして遺言を書かせました。
このような場合でも、他人の意思が介入した形跡がない限り自書である、と認められました。

②ワープロ・パソコンでつくった遺言書は自筆証書遺言としては認められないと解されています。同様にビデオやテープに録画・録音しても法律的には効力がありません。

氏名の自書が問題となった事例

氏の記載されてない遺言    C川治郎兵衛は、相続人の争いを避けるため、遺言書を作成しました。 自筆証書遺言の作成しました。遺言書には、署名が「親治郎兵衛」書かれていました。「C川」という氏が、書かれていません。これは、有効な自書による遺言とされました。     署名は誰が遺言を書いたか特定できればよいので、氏又は名前の一方、旧姓、通称、ペンネーム、芸名、雅号などでもよいとされています。とはいっても、氏名をきちんと記載するに越したことはありません。

 

押印が問題となった事例
①押印が指印であった場合でも遺言は有効です

②押印を欠き、サインしかしていない場合については、日本に帰化したロシア人が英文で作成しサインだけして印を押していない遺言を有効とした判例がありますが、これは遺言者の特別な事情を考慮したものだとされています。 ③綴じられた二枚の遺言書に、契印がない事案

2枚にわたる遺言書に、2枚目に、日付・氏名・押印がなされていましたが、1枚目と2枚目に、契印がありませんでした。全体として一通の遺言書として作成されたものであると確認できるならば、有効な遺言書と認められました。 やはり、契印はしておいた方がいいと考えられます。

 

日付の記載が問題となった事例

①「吉日」との記載

遺言書に日付が「昭和四拾壱年七月吉日」と記載されていました。

これは、日付の記載を欠くものとして、無効な遺書言であるとされました。

②客観的に特定できる日付の記載

「70歳の誕生日」「定年退職の日」など客観的に特定できる日付は認められます。

③日付の誤記

自筆証書遺言に記載された日付が真実の作成日付と相違していても、誤記であること及び真実の作成日付が遺言書から容易に判明する場合は、遺言書は有効とされました。

相続人のなかに行方不明者がいる場合の遺産分割について(遺言書が無い場合)

カテゴリ: 相続(遺産分割),遺言 2013/06/02

トラブルになりがちな事例としてあげていますが、遺言書があった方が良いこのケースについて、もう少し詳しく見てみましょう。

遺言書が無ければ次の様な手順を踏むことになります。

A)行方不明から7年経過している場合
行方不明になってから7年経過していれば、行方不明者の配偶者や兄弟姉妹が家庭裁判所に「失踪宣告」を申立て、行方不明者は死亡したものとみなしてもらうことも出来ます(子供がいない場合)。失踪宣告が認められると、行方不明者以外の相続人で遺産分割をすることになります。

B)行方不明から7年経過していない場合
行方不明から7年経過していないため失踪宣告がされていない場合は「不在者財産管理人」を選任する必要があります。選任された財産管理人は、行方不明者の代わりに遺産分割協議に出席し、そこで分割された財産を管理します。財産管理人は、行方不明者の配偶者や兄弟姉妹など遺産分割に関して利害関係を持つ人が、家庭裁判所に申立をして選任されます。

①不在者財産管理人の選任

不在者の財産管理人の申立がされると、家庭裁判所は不在者の状態を調べた上で、不在者財産管理人を選びます。財産管理人には、遺産分割に利害関係を持たない人が選ばれます。

②遺産分割協議

行方不明者の代わりに財産管理人が遺産分割協議に参加します。遺産分割協議を成立させることは処分行為にあたるため、家庭裁判所の許可が必要となります。行方不明者の取得分は法定相続分になることが一般的です。財産管理人は行方不明者の取得した財産を預かり、税金の支払などをした後、行方不明者本人が現れるまで管理することになります。

③財産の行方

不在者財産管理人が将来にわたって永久に財産管理をすることはできません。行方不明から7年を待って、財産管理人や行方不明者の配偶者または兄弟姉妹らが家庭裁判所に失踪宣告の申立をし、不在者財産管理人に管理されていた財産が相続できることとなります。

行方不明者がいる場合の遺言書の有効性

相続人の中に行方不明者がいる場合、これだけの大変な手続をすることになります。

自分が亡くなったときの相続人の中に行方不明者がいる場合、行方不明者以外の人に相続させる遺言書があれば不在者財産管理人を交えた遺産分割は不要です。

心当たりのある方はご一考下さい。

こんな遺言はご存知ですか?(清算型の遺言について)

カテゴリ: 遺言 2012/09/19

「自分の死んだ後は、自宅を売って、最後にかかった医療費などの経費を支払い、残りをすべて慈善団体のために寄付したい」

遺産を処分する権限を有する遺言執行者を指定し、その人に委ねれば、実現できます。このような内容の遺言書は清算型の遺言といいます。

清算型の遺言でも、譲る相手、金額などを確定させておくことが必要です。慈善団体にもいろいろあるので、どこか、はっきりさせておかなくてはいけません。死後支払うべき経費には、借入金の残金、医療費、税金、葬儀費用などを加えることもあります。

遺言執行者は、未成年者と破産者はなることができないとされています。相続人でも良いですが、専門家に依頼した方が安心だろうと思います。遺言書の中で「Aを遺言執行者に指定する」と記載するのが一般的ですが、遺言執行者が指定されていない場合やなくなった場合は、利害関係人の請求によって、家庭裁判所が選任します。

民法では、遺言執行者には、遺言を執行するために必要な一切の行為をする権限があるとされており、不動産の所有権移転登記などの行為ができます。清算型の遺言では、遺言執行者が遺産を売却し、借入金などの返済や売買経費などを支払い、残りを分配します。

単に誰に何を譲るという内容に比べ、複雑になるかと思われますので、専門家に相談のうえ公正証書遺言で作成することがよいでしょう。

遺言書に係わる紛争を防止するために④

カテゴリ: 遺言 2012/08/23

遺言書があっても、相続時に問題が生じる具体例の続きです。

③遺留分を侵害する遺言をした

まず、遺留分に反する遺言は可能でしょうか?

これは、可能です。

例えば、相続人に妻、子供がいる場合に妻に遺産全部を相続させる内容の遺言は、子供の遺留分を侵害しますが遺言全体が無効になるわけではありません。この場合、子供は、被相続人の妻に侵害された遺留分を減殺請求することができます。

次に、判例では、遺留分減殺請求権の行使により、贈与や遺贈は遺留分を侵害する限度で失効し、受贈者や受遺者が取得した権利はその限度で当然に遺留分減殺請求をした遺留分権利者に帰属することになるとされています。

妻だけに相続させるつもりだった遺産が、遺留分減殺請求された場合には子供との共有となってしまうこともあります。遺産の土地を、遺言者の妻は住み続けるつもりだったが、子供は売ってお金にしたいと考えていた場合などに問題が発生します。

このような場合、民法第1041条は受遺者や受贈者は減殺を受けるべき限度の価額を遺留分権利者に弁償することで、返還義務を免れる仕組みを設けています。

例の場合、遺言者の妻が、子供に遺留分減殺請求相当分を支払うことで、土地は妻のものとすることができます。

遺言書に係わる紛争を防止するために③

カテゴリ: 遺言 2012/08/22

遺言書があっても、相続時に問題が生じる具体例の続きです。

②遺言執行者が指定されていない

遺言執行者は、遺言の中で指定しておくことができます。また候補者がいないときは、利害関係人から家庭裁判所に請求して、遺言執行者を選任することができます。

遺言執行者は法律上、相続人の代理人とみなされます。遺言執行者ががなくても一部の手続を除き、相続人が遺言の内容を実現することが可能ですが、手続を円滑に進めるためには、遺言執行者を指定しておく方がよいでしょう。

民法第1013条は遺言執行者がある場合には、相続人は相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることはできないとしており、判例でも遺言執行者がある場合に相続人がした財産の処分行為を無効としたものがあります。

そもそも遺言書は相続人間の争いを避けるため、被相続人が作成することが多いはずです。遺言書に反した遺産の処分などを相続人にさせないためには遺言執行者を定めておくのが良いでしょう。

遺言書に係わる紛争を防止するために②

カテゴリ: 遺言 2012/08/21

前回のブログで遺言の内容面で相続人間で問題が生じることがあるとお伝えしました。

では、具体的にどのようなケースが遺言書があっても、相続時に問題が生じるのでしょうか?

①遺言者よりも先に受遺者が死亡した。

遺言を書いた人(遺言者)よりも先に、遺産を受け取る人(受遺者)が亡くなった場合、

遺言はその限度において効力を生じません。

例)甲さんが死亡したとき、Aさんに土地(京都市西京区山田四ノ坪町1-6)を、Bさん

に有価証券を相続させる遺言をした。

Aさんが交通事故で死亡したあと、甲さんが死亡した。

→ この場合、原則的にはAさんに土地を相続させる遺言は効力を生じなくなり、土

地は甲さんの相続人が相続することになります。

甲さんは、仮にAさんが甲さんより先に死亡していた場合についての遺言内容を記すことで、上記のような事態の回避を考えておくことがいいと思われます。

次回も具体例についてです。

遺言書に係わる紛争を防止するために①

カテゴリ: 遺言 2012/08/20

先日来、某新聞に遺言に関するコラムが連載されていますね。

やはり、コラムの内容にいくつか気になるところがありますので、ブログの中でご紹介させていただきます。

遺言について勉強された方、田尻事務所の遺言・相続のホームページについて読まれた方はご存じでしょうが、遺言には大別して公正証書遺言と自筆証書遺言があります。

田尻司法書士事務所では、公正証書遺言をお勧めしていますが、それは自筆証書遺言は内容にいたる入口の段階で形式面で不備が多く、遺言を書かれた被相続人(亡くなられた方)の意思を反映した相続手続ができないことが思った以上に多くみられるためです。

これに対し、公正証書遺言は形式面での不備はまずありません。

ただし、遺言の内容面で相続人間に問題が生じることはあります。これは自筆証書遺言・公正証書遺言に共通します。新聞のコラムでも書かれていたこの問題について、次回のブログで紹介します。

自筆証書遺言について(作成している方は確認を)

カテゴリ: 遺言 2012/07/25

先日、某新聞に遺言(自筆証書遺言)に関するコラムが掲載されていました。

この記事を見て何人かの方から問い合わせがあり、またこのコラムの内容にもいくつか気になるところがありましたので、今回このブログを書くことにしました。すでに自筆証書遺言を作成されている方は、以下の点をご参考にご自身の遺言を確認ください。

①記入方法 全文自筆で手書きします。パソコンを使って書くと無効です。

②日付記載 平成○年○月○日と記載します。平成×年×月吉日は無効です。

③氏名自署 きちんと書くべきですが、氏のみやペンネームでも遺言者を特定

できれば有効とした判例もあります。

④印鑑押印 認印でかまいません。拇印・指印でもかまいません。

⑤訂正方法 加除その他の変更は、遺言を書く人が、その場所を指示し、これ

を変更した旨を附記して、署名しかつ変更の場所に押印しなけれ

ば、変更したことになりません。ただし、明らかな誤記の訂正は

この方式に違反していても遺言の効力に影響しないとした判例も

あります。

自筆証書遺言は手軽に作成できますが、法律の専門家が関与しないため、いざ現物を拝見すると不備があったりして、故人の遺志をかなえられなかったということが、実際に少なからずあります。

遺言は専門家に相談して、公正証書で作成することをお勧めします。

遺言について。

カテゴリ: 遺言 2011/02/22

例えば、売買契約の場合、それが口約束であろうが、書面で契約をしようが、意思の合致さえあれば、契約は完成します。一方、遺言は要式行為とよばれ、法律で定められた方法に則って行わなければならず、ドラマのワンシーンの如く息をひきとる直前に「お前にわしの財産をやる・・・・」というようなメッセージを残しても、それは法的に有効な遺言とはなりません。

では、法律に定められた遺言の方法の主なものを見ていきましょう。
では、法律に定められた遺言の方法の主なものを見ていきましょう。① 自筆証書遺言(民法968条)

自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を
自書し、これに印を押さなければならない。

 

まず、自筆証書遺言です。
遺言者が自筆で、内容・日付・氏名を記し、押印すれば出来上がりという最も簡便な方法です。ただし、この方法は、専門家の目が届かないため、形式や内容に不備が生じやすく、それが相続人間の争いの種になることも少なくありません。また、遺言者が亡くなった後に、“検認”という手続きを経なければならず、相続人の手を煩わせてしまうことになります。

② 公正証書遺言(民法969条)

公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一  証人二人以上の立会いがあること。
二  遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
三  公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
四  遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
五  公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。

②公正証書遺言(民法969条)

公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。一 証人二人以上の立会いがあること。二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。次に、公正証書遺言です。

公正証書遺言は、自分一人で完結する遺言ではないため、手続きが煩雑で、その分費用もかかります。しかし、遺言書の原本が公証人役場に保管されるため、破棄・改ざん等の恐れがありません。また、死後、“検認”という手続きも必要ではなく、スムーズに遺言の内容を実現できます。よって、当方は公正証書遺言をおすすめしております。

他にも、秘密証書遺言、特別の方式として死亡の危急に迫った者の遺言、伝染病隔離者の遺言、在船者の遺言、船舶遭難者の遺言等があります。

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